名のない足跡


ライトはあたしに近づいて来て、呆れつつも笑った。


「何か、考えがあるんでしょう?どうせ、姫様は止めたって聞きませんしね」


「ライト…」


どうせ、って言葉が引っかかったけど、あたしは顔を輝かせた。


「よし、行くわよ!…って、アズロ、放してってば」


まだあたしの腕をつかんでいたアズロは、あたしをじっと見てから、口を開いた。


「…オレも行く」


「…へ?」


「護衛副隊長だもん、オレ」


行くなって言ったり、行くって言ったり…。


あたしは半ば呆れながらも、アズロは心配してくれてるんだなって思うと嬉しくなって、笑顔で頷いた。



あたしたち三人は、大広間を後にした。


廊下に出ると、様々な場所から悲痛な叫び声が聞こえる。


あたしは、ぎゅっと目を瞑った。



あたしの、やるべきこと。


「ライト、アズロ、ついて来て!地下に行くの」


そう言うとすぐに、あたしは走り出した。


二人が後ろからついて来る。