楽しかったパーティーは、一瞬にして地獄へと変わった。


奏でられていた旋律は、爆発音や恐怖の叫び声に呑み込まれる。



「ルチル!!」



兄様が、すぐにあたしのもとへ駆け寄って来て、告げた。


「ウェルス国軍が、侵入してきた…!!」


「………!?」


よりによって、こんな時に。


あたしが口を開くより先に、兄様はあたしに言った。


「いいか、ルチル!こういうときどうすればいいのか、俺は教えたよな!?」


「でもっ…兄様…」


今や、大広間は大混乱に陥っていた。



人々は互いに出口へ向かおうと、押し合っている。


兄様はその状況を横目で確認すると、あたしの肩をつかんで言った。



「何があっても、お前は逃げろ。…自分を信じるんだ」



あたしは兄様の瞳を見て、ゆっくりと頷いた。


兄様は、あたしの横にいるライトを見る。


「ライト、ルチルを頼む」


「はい」