名のない足跡


「よ、よかった…見つかって」


日頃の運動不足からか、ちょっと走っただけで息が切れてしまう。


ライトは、あたしの背中を優しくたたいてくれた。


「姫様もたまには、俺たちと一緒に体動かした方がいいですね」


…なんて、笑って言うから、胸の奥が温かくなる。



他のひととは違う…


"特別"って感じ。


「ライト…は、ここにずっといたの?」


少し恥ずかしくなって、あたしも手すりにつかまり、外を眺めた。


雪は止むことがなく、辺りを白く包み込んでいく。


「はい。雪が…綺麗だなって思って」


そう言って、ライトも雪をじっと眺めた。



しばらく沈黙が続いたけど、全然嫌じゃなかった。


逆に、ライトの隣にいれることが心地よくて、ただ一心に、雪を見つめていた。



吐く息は白く、雪と重なり合う。


冷たい風が肌を突き刺し、あたしは軽く身震いした。



「…あ」



フワリ、と温かい空気に包まれた。