名のない足跡


「わっ、すいませ―…」


「あれ、今日の主役じゃん」


あたしがぶつかったのは、アズロだった。


正装してて、かっこいいんだけど…両手に骨付き肉ってどうなの。


かぶりついてるし。


「アズロ…えっと…」


「ふぁいひょう?」


「は?…ちょっと、食べながら話さないのッ!」


ごくん、と飲み込んだアズロは、もう一度口を開いた。


「隊長でしょ?探してんの」


「…………」


「ぐはっ!…ちょっ、痛ぇー。急に殴んなよ」


アズロのお腹に一発かましたあたしは、つーんと歩き出す。


こう、何もかもバレると、逆に腹が立ってくる。



けど、アズロの次の言葉で、あたしはピタッと足を止めた。


「…オレ、見たけど!バルコニーで!」


「…ありがと!」


短くアズロにお礼を言って、あたしはすぐに走り出した。





「…ライトッ!!」


「…姫様」


あたしは、バルコニーの手すりに寄りかかって、外を眺めているライトのもとへ、小走りで駆け寄った。