ぶつぶつと文句を言うウィンから逃れようと、両耳を手で塞いだ。
アズロは、何かを考えるように、また黙ってしまった。
ライトは相変わらず、扉に寄りかかったまま。
「…君さぁ…」
「ん?」
小さく呟かれたアズロの声に反応して、あたしは両耳から手を離した。
「…こんなに努力して、楽しい?」
執務室が、しんと静まり返った。
きっと、普通の王様だったら、「無礼者ー!」とか言って怒ったりするんだろうけど、あたしは軽く微笑んだ。
アズロはきっと、悪気があって言ってるんじゃないってわかったから。
「楽しいっていうか…、うーん何だろ?…嬉しい、かな」
「嬉しい?」
そう、と言って、あたしは続ける。
「あたしにも、出来ることがあるんだーって思うと、嬉しいの。それがやる気に繋がって…その努力が報われたら、それ以上の喜びはないと思う」
あたしは、窓の外を眺めた。
赤く色づいた木々が、静かに音を立てて揺れる。
「あたしの考えで、この国を護れるなら…どんな努力だって惜しまない」