名のない足跡


俺がにっこりと答えると、アズロはあからさまに嫌そうな顔をした。


「うわー、言っとくけどオレ、五年ぐらいしかマジメにやってないよ?」


「それ以降はダラダラながらも続けてたってことですよね?」


「う。…ダラダラながらとか言うなよなー。ま、そうなんだけどさ」


アズロの準備が整ったようなので、俺は自分の剣を鞘に収め、壁に立てかけられていた練習用の剣を手に取る。


俺たちは、訓練場の中央に立ち、向かい合った。


「オレさぁー、死んだりしないよね?」


首を回しながら問いかけるアズロに、俺は笑顔で答える。


「アズロが上手く避けてくれたら、大丈夫だと思いますよ」


「…その笑顔、悪意の塊だよね」


「そんなことありませんよ?…では、いきますよ」


「ん、了解」


アズロが構えたのを見ると、俺は地を蹴って前進する。


一瞬にして、アズロの目の前に入り込んだ俺は、腰を屈めて足を払おうとした。


ところが、寸前のところでアズロは跳躍し、後方へ着地した。


「…へぇ」


俺は思わず感心した。


決して全力とはいかないが、俺のスピードについてきている。