名のない足跡


「……あ」


不意に、ライトがこっちを見たから、視線がぶつかった。


驚いて小さく声をあげたあたしは、急に恥ずかしくなってうろたえた。



…どっ、どうしよう!?


見つかっちゃったっ!!



逃げようか、何て考えも虚しく、ライトはすぐに駆け寄って来た。


「どうしたんです?姫様」


「あ、え、うーんと…頑張ってるかな~?って」


明らかに目を泳がせながら言うあたしに、ライトは笑って答える。


「珍しく来たと思ったら、俺の偵察ですか」


「ま、まぁ、そんなトコロ」


もごもごと答えていると、遠くの方から声が聞こえた。


「ライトさーん!!」


声の方を見ると、数人のメイドさんたちが、パタパタと駆け寄って来る。


その中に、他のメイドさんに引きずられながら走っている、ミカが見えた。


メイドさんたちは、すぐにライトを囲んで話し始める。


「ライトさんっ!これ、差し入れですっ!」

「暑くないですか?タオルどうぞっ!」

「私、お守り作ってきたんですっ!」


あたしと言えば、カヤの外って感じで、ポツンと立っていた。


どうやら彼女たちは、あたしの姿が目に入っていないらしい。