甘く、温かいドリンク

店員はきょとんとした顔を見せたが、すぐに正気に戻って接客をはじめた。

「はい!甘いドリンクがお好きな方なら、きっと気に入るとおもいますよ!」

やや的外れな回答と、不気味な接客笑顔の不愉快さも、私を素通りしていった。


私は本日のコーヒーしか飲まない。砂糖もミルクも入れない。
甘いドリンクなんて、口の中がべたべたするし、頭がすっきりしないし、好まない。
このドリンクにはコーヒーすら入っていないことを、私は知っている。
好まない。わたしはこんな飲み物、好まないのだ。

これを好んで飲むのは、君だけだ。




「じゃあ、それをください」


ランプの下の提供台から、信じがたいその飲み物を受けとった。


人の多い店内に座る気はしなかった。
肌寒く誰もいないテラス席は、私のための席のように見えた。


外の喧騒と、冷たい風。
テーブルの上には不思議な飲み物。

恐る恐る口をつけた。


それは、予想していたよりも甘く、温かく、懐かしさを感じる味だった。


懐かしい?なにが懐かしいのだろうか?
初めて飲んだ甘ったるいこの子供だましの飲み物の、何が懐かしいのだろう?