甘く、温かいドリンク

お酒を飲む気すらおきなかった。

涙がなんとかおさまって、私はしかたなく歩き出す。どこに向かっているわけでもなかった。

ただ虫のように、明かりに吸い寄せられていた。


気づけば、あのコーヒーショップの前にいた。

平日の夜だというのに、にぎわっているこのコーヒーショップに入るには少し疲れていたが、ほかに行くところもない。
なんとなく、流れに飲み込まれるようにコーヒーショップに入り、レジに立った。


ご注文はお決まりですか?そう作り笑顔の店員に問われて、何も考えていなかったことに気づいた。
いや、そもそもコーヒーショップでなにを注文しようなど迷わないのだった。こういうコーヒーショップで頼むのは、決まって本日のコーヒーなのだから。

あたりまえのようにブラックコーヒーを飲むのだから、なにも迷う必要もないし、ご注文は決まっているようなものだ。

そう、ふと我に返って、本日のコーヒーを指さそうとして、その途中で、私は気が付いてしまった。そして、店員にたずねていた。

「キャラメルミルクって、甘いですか?」