明日が来ないことを、

俺は知らない。


ゆずが泣いていることを、

俺は知らない。


ただ、

ずっと俺の中でゆずが笑っていて、

自然と俺は幸せな気持ちでいっぱいになっていた。


“ゆず…好きだよ…。”


そう口にすれば、ゆずは優しく笑ってくれた。


でも…それでも…

君の口からちゃんと聞きたくて

急かすように彼女を見つめても

彼女は切なく笑うだけだった。


ゆず…

早く…

早く…

ゆずの口から聞きたいんだ…。


そう思うのに…

もう声は出そうになくて、

どんどんと彼女が遠のいているような気がした。


ゆず…?


行かないで…
行かないでくれ…。


切なげに笑う彼女はなにも言わず、いつしか俺に背を向けた。


ゆず…
俺待つのは好きじゃないんだよ…?

だから…

だから…


君の想いを聞かせてくれ…。


ゆず…。








プツンと、静かに途絶えた俺の意識が戻ることは、


もうなかった。


ただむなしく、


机の引き出しの中で眠るブローチが


彼女の手に渡ることなく


静かに涙を流した。
 

“私はあなただけを見つめる”


そんな想いのつまった言葉を


小さな箱に残して………。