ピー…っと鳴り響いた電子音の音で、私はハッと目を覚ました。


バッと顔を上げれば、痛々しい優輝くんの姿が目に止まる。


「ゆ…きく」


すぐ横にあった機械の画面を覗けば、さっきまで波形のようになっていた線が、きれいな一直線を描いていた。


私はその光景を、目を見開いて見つめる。


「ゆ…き…優輝くん!!!」


叫んだ声が病室内に響き渡って、ガラッという音と共に数名の人が入ってきた。


「優輝!」


それが彼の両親と医師の人たちだと気がつくのに数秒かかって、これが現実なのだと気づかされる。


「優輝…くん…?」


なおも鳴り響き続ける音は、私にとってはもう雑音にしか思えなかった。


「ゆーちゃん!」


崩れ落ちそうになった私の体を、おじさんにしっかりと抱きとめられる。


「う…そ…。…や…いや!!」


ボロボロと涙が止めどなく流れてきて、崩れ落ちるように私はその場に座り込んだ。


医師の人の声や、私と同じように泣き崩れるおばさんの声が聞こえてるのに、

いまだにこれが夢であってと願う自分がいた。



“ゆず!”


「優輝くん…。」


いまもなお耳に残る彼の声がこだまする。


「優輝くん…。」


“明日は…絶対聞かせて?”


まだ私…言ってないよ…?


“でも待てるのは明日まで。約束だよ?ゆず。”


優輝くん…待つの好きじゃないって言ったじゃん…。


ねぇこのままじゃ…

ずっと待たせちゃうよ…?


優輝くん…。


優輝くん…


目を…目を…


「開けてよ…!」


まだ言ってない。

ずっと

ずっと

言いたかった。


私…

私…


あなたが…


あなたのことがずっと……








ねぇお願い…

お願いだから…

どうか…どうか…

どうか…!







「ゆ…き…くん…。優輝くん…!!!!」









この想いを…


この想いを……




口にさせてください……!!







むなしく響いていた電子音は、


いつしかピタリと音をやめた。


聞こえてきたのはすすり泣く声と


いまだに私の中でこだまし続ける


彼の優しい声だけだった……。




“ゆず!”




「優輝くん…。」