ここの客は何の「アズ」を知っているのだろう。
「BARのスタッフとしてのアズ」
「ジャズピアニストのAz」
「平凡な高校生の空鶴」
「喧嘩師のAz」
「朱鷺(とき)の配下のAz」
どれを指して名前を呼ぶのだろう。
「アズ」
カンナは、ただ1人の人として呼んでくれる。
それがどれほどの救いだったかは、想像できないだろう。
そこから更に欲が出た。
絶対に求めてはいけない人に、見返りを求めるようになってしまった。
彼女から愛されたいと望んでしまった。
__今日は、カンナがいなくてよかった
ピアノを弾きながらアズは、
今、耳からきこえる人の声を、心の中からふさいで行った。


