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その日、夕方からのBARの仕事では、カンナの姿がみえなかった。
そして、珍しくマスターが、よく声をかけてくるので、
取り留めのない会話をしながら、流れで
「カンナはまだ来ていないのですか?」
ときいた。
すでに仕込みの準備を始めているマスターは、手を動かしながら答える。
「あいつは、珍しく発熱だとよ。
…お前、何かしたのか?」
「マスター」
空鶴は真正面にマスターを見据えた。
わずかに驚きを持った面立ちでこちらをみる。
「カンナには何もしていません。
僕はトキさんのものに、手を出しません。」
今日は散々だ。
悠といい、夢といい、マスターといい、この言いがかりはなんだ。


