彼女の普段の挑発的な笑みを思い浮かべる。
そして今の無防備な状態のカンナを、
気持ちのままに蹂躙したい欲望に駆られた。
その想いをぐっと抑え、行き場のなくなった気持ちで手をさまよわせ、
頬をひと撫でした。
彼女は、くすぐったそうにして、また寝息を溢(こぼ)す。
「__眼はね、自分が見るだけでなくて、自分自身をも映すのよ」
先ほどのBARでの言葉が本当だとしたら、
自分はどうしようもなく濁っているはずだ。
素敵だと言ってくれたこの人は、
血のように赤い瞳で、一体何を見たのだろう。
__俺の気持ちも知らないで。
いや、むしろ知っていて、彼女は弄んでいるのかもしれない。
アズは、カンナの額の髪を払い、そこにそっと唇を落とす。
そして上布団を彼女の肩までかけて、
静かに部屋を出て行った。


