『おはよう』

なゆたに消したいそのコトバをアハトが吸い取る。

『おはようアハト』

オトコはそれを消し去るようにアハトに言った。

アハトはオトコの後を付いて来た。

樹の下にいつものカゴがある。
カゴを取り振り返ると金色の髪に黒い瞳の少女がアハトを抱いていた。
少女の目はよく見れば漆黒と言えるものではなかった。

深すぎる青。

少女はその瞳でたしかにオトコを見ていた。

少女は薄桃に薫る道をアハトを抱いたまま付いてきた。

オトコにはそれを許す気も止める気もなかった。

部屋の前で少女はアハトを解き放ちオトコにさよならを言ってもとの道を歩いて行った。

真っ白な空間に帰り付いたオトコはネコと一緒に食事をとった。

窓の外は見なかった。