『おはよう』

ネコに言ったのではない。
それなのにネコは躯を起こしオトコに向かってにゃあと鳴いた。

紅い樹の下には一人の少女がいた。
やわらかな金の髪と深い黒の瞳が風にふかれたのしそうに揺れていた。

オトコはいつもの様に置いてあるカゴを取った。

少女はオトコに微笑みかけていたがオトコはわらわなかった。

彼は笑うコトを知らなかった。

いつもの帰り道。
虹色に咲き乱れていた花たちが枯れていた。


ネコはまだ白い空間に黒いしみと化していた。

いつものシチューは赤いミネストローネになっていた。

オトコはミネストローネとミルクを飲み、いつもの様にパンを頬張った。

今日も虹がでていた。

オトコは初めて昨日のコトを想った。