たかが一分遅刻しただけでこんなに怒ることはないんじゃないか。
とか思っている奴もいるだろううが、ここではそんな生易しいことは許されないのだ。
〝ホワイトスター〟
身寄りのない子たちのための、施設だ。
〝ホワイトスター〟の花言葉は「信じあう心」。園長はこの言葉を気に入っていて、信じれる人ができるように、とこの名前にしたそうだ。
俺と成宮は小さい頃からこの施設にいる。
俺は3歳ぐらいの頃に、預けられた。
成宮は詳しく知らないが、生まれてすぐのころに、施設の前に置かれていたとかなんとか。
ここでは詳しいことなんて聞いちゃいけない。
ここではみんな兄弟。
いちいち聞かなくても「信じあえる心」を持っているのだから。
「お前ら、今日から一週間おやつなしだからな」
「えぇー」「…」
「わかったな。じゃあ、さっさと晩飯の準備しろ」
成宮はおやつ一週間なしが気に食わなかったらしい。
成宮はかなりの甘党だから、おやつなしと言うのは相当キツイだろうな。別にからかうつもりはないけど。
「燿(よう)さん、マジでそれだけは勘弁!」
「ああ!?もう決まったことにいちいち突っ込むな。お前男だろ、それぐらい我慢しろよ」
「男とか関係ぇーねーだろ」
晴と燿さんが言い争いをしだした。
燿さんは園長だ。ガラはとてもじゃないがいいとは言えないけど、なんでか資金力だけはあって、みんな楽しく過ごしている。
「掃除一週間やるから菓子は…」
「は?お前ぇー部活だとかコーチだとかで帰ってくんの遅いし、帰ったら食べるだけ食べて寝るし、…掃除下手だし」
「んなー、燿さんに言われたかねーよ!圭さんがいねーとここはゴミ屋敷になってるじゃねーか」
「お前なー、追いだすぞ」
「ああ!?」
だんだんヒートアップしてきた。
ここは無視するほうがいいだろうから、さっさと着替えて飯にしよう。
横を通っても気づかない二人は、ある意味相性ピッタリだと思った。
