願うは君が幸せなこと


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「……それで?結局どうなったの?」

パンケーキの上にフルーツが乗ったものにナイフとフォークを入れながら、夏美がそう尋ねてきた。

創くんの事件から二日後の今日は土曜日、仕事は休み。
お互いに予定も無いし、と夏美と連絡を取り合ってランチに来ている。
パスタやピザを食べながらたわいない話をたっぷり一時間ほどした後、デザートを頼む頃にはすっかり仕事の話ばかりになるのはいつもの事だ。

二日前の創くんが落ち込んだ話をすると、夏美も心配そうに食いついて来た。
おそらく創くんは営業部のみんなから、可愛い弟のように思われている。

「だから昨日も創くん元気なくて。なんとかしたいんだけど、私は補佐なだけで実際に営業してるわけじゃないから。何言っても説得力に欠ける気がするっていうか」

「あー、その気持ちわかるなあ。”お前に何がわかる!”とか思われたら嫌だしね」

「そうなんだよね……。一応、参考になりそうな資料集めてみたりしてるんだけど。ほら、今の部長とかが昔作った自己分析表とか」

資料室でファイルを借りた中から、創くんと似たような悩みをかかえていそうな人のものをいくつかコピーして、渡してみたのだ。
だけど大して役立ちそうには思えなかった。

既に半分ほど食べ終えているティラミスに視線を落とす。
夏美が食べているパンケーキほどじゃないけれど、これもなかなかのボリュームだった。

すると夏美が何かを思い付いたようで、テーブルを軽く叩いた。

「ねえ、現役で営業やってる先輩とかに相談すればいいんじゃないの?」

それを聞いて、否定するようにぶんぶんと首を左右に振る。

創くんは、先輩達にアドバイスを求めてもどうしようもないことを知っているのだ。