願うは君が幸せなこと


「は!?……おい、何の真似……」

「私勘違いしてて、月宮さんのこと勝手にわかったような気になってた。偉そうなこと言って、あんな顔させて………、ごめんなさい」

今更こんなことしたって困らせるだけかもしれない。
だけどあの時の、月宮さんの表情が忘れられない。だから、会えたら真っ先に謝りたかった。

「咲野さんと、付き合ってると思ってたの。でも、二人には幸せになってほしいって心から思えなかった。……八つ当たりみたいなことして、月宮さんに酷いこと言った。全部私の勘違いだったことに、やっと気付いたの」

月宮さんの顔を見ることが出来ない。顔を上げられない。
怒ってるだろうか。

月宮さんの足元を見る。
どうか、遠ざかっていかないで。

「はあ………、馬鹿かお前は。今日の昼、福島に聞いたよ何もかも」

思わず勢いよく顔を上げた。

「言っとくけどな、俺はまあまあ傷付いたからな。お前の勘違いにまんまと振り回された」

そう言った月宮さんの口調は、とても呆れてるようだった。だけど、全然怖くはない。

今日の昼に夏美に聞いたって、いつの間に。
全然知らなかった。夏美は、昼からの仕事中もいつも通りだったから。

「……どこからどこまで聞いたの?」

「俺と咲野が付き合うっていう会話を聞いたんだろ?ったく、俺があいつと付き合うわけねえだろ」

どうやら私が月宮さんを好きなことまでは、話していないらしい。
夏美の気遣いに心の中で感謝した。