中学は、校則と勉強が厳しい女子校に入っていてメイクも、恋の一つもできなかった。

ずっとポニーテールを結んでいた髪の毛も、おろして少し巻いたりしながら整える。


入学する高校は、受験勉強こそ大変だったものの入ってからは緩い校則と明るい校風が売りだと聞く。


今度こそ……思いっきり青春を楽しみたい。


そして…ずっと少女漫画の中でしか触れ合うことのできなかったような恋がしたい。




「あら、二葉。
可愛いじゃない、入学式頑張ってね。」


「うん!はやく友達つくりたいし…もう行ってくる!」


「えっ、ちょっとこんなにはやくから?まだ朝ご飯食べてないじゃない…」


「ひひの、ひひの」


「ってまさかパンを口に入れながら学校行くつもり!?」


「ひっへひまーふ!」


青春の一ページっていったら、やっぱりこれだよね!パンを咥えながら登校!

角を曲がったら、イケメンが現れてぶつかって恋が始まったりして…



「ちょ、ま…もう、あの子ったら。
貝斗くんも同じ学校に入学したって言えなかったじゃない…

まあいっか、どうせ今日あってくるのよね。」



胸を躍らせながら足早に家を出ていった私は、そう呟いたお母さんの言葉なんて聞こえていなかった。