「ちょっと、こっち。きて。」
「へっ?」
なになになに!!?
こっちをなお見続ける女の子たちが気が気でならない私の意思なんかガン無視な貝斗。
私の手首を掴んで、ズンズンと歩いていく。
って家!!!!家!!!!通り過ぎましたけど!!?私たちの家!!!!!!!
「なぁここ、お前おぼえてる?」
静かに貝斗が立ち止まったのは、小さな閑散とした公園の前。
中途半端な時間のせいか、いつもは人気な砂場や滑り台にも人っ子一人いない。
ここ……。
おぼえてるよ、忘れるわけないじゃん…。
なんだか急に昔のことを思い出してしんみりとした気持ちになる。
控えめにコクリと頷いて、また俯いた。
あの日は、今日とは正反対な春なのに寒い、私たちの気持ちを表すのにぴったりな天気だったね。
「俺が転校するとき、お前と最後に遊んだのはこの場所だったな。」
