「は、はい。私は効果があると思いますよ」


ミレーヌは一旦開いた口を、迷った顔ですぐに閉じる。何か言いたげな彼女をじっと見ていると、決心したように再び口を開いた。


「今度分けてもらえるかしら? ……お父様が、最近忙しかったせいか眠りが浅いようで心配なの」


花祭りに合わせて市場や道を花で飾れたのはクレトンが尽力したお陰だ。疲れを見せないように隠して笑顔で現れた彼は、良くできた人だと改めてライナは思う。

私がわがままを言ったせいね、と悲しそうに俯くミレーヌを見て、ライナはひとつ思い付いたことを提案した。


「ーーそれなら、ミレーヌさんが育ててみますか?」

「え?」


目をぱちりとまばたきして、ミレーヌの時間が一瞬止まる。少し考えた後、はっとした表情に変わった。


「……さてはお父様ね」

「すみません」


簡単に気付かれてしまい、苦笑しながら謝った。ライナがそのようなことを言い出すはずがないと訝しまれたようだ。ミレーヌの眉間にしわが寄っている。


「でも……そうね」


すっきりした笑顔で、ミレーヌは微笑んだ。


「この、セーレンを育ててみたいわ。うまく咲いたらお父様へ贈りたいの。育て方を教えてくださる?」

「勿論です」


沢山の白い花を背景に佇むミレーヌは、息を飲むほど華麗に見えた。