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「……これが、私?」


ライナが驚きの声を上げたのは、丁寧に化粧を施されて、まるで別人のように変身した自分を姿見で確認した時だ。先日選ばせてもらった青色のワンピースにお揃いの靴。余所行きらしく手袋もはめてもらった。手袋と言えば愛用の畑作業用のものしか身に付けたことがなかったライナは、静かに興奮している。

ーーあの、ワンピースを試着した日から、そわそわしているうちに時は過ぎ、あっという間に花祭り当日となってしまった。

約束通りこうしてミレーヌの屋敷へやって来たライナは、用意されていた使用人に全身手入れをされたのだ。人形のようにされるがままだったライナだが、姿見の前まで連れてこられてようやく我に返った。


(お姫様みたい!)


本物のお姫様はもっと絢爛豪華だろうが、ライナにとっては最上級の代物だ。これを地味と呼ぶミレーヌの気持ちが分からない。


「見違えたわよ、ライナ」

「ミレーヌさん」


振り向くと、支度を終えたミレーヌがライナの方へ向かって歩いて来ている。
彼女が身に付けている薄桃色の滑らかな布を使ったドレスは、瞬時にライナの目を釘付けにした。


「すごく綺麗です……」


ほう、とため息混じりに呟くと、ミレーヌは可笑しそうに言った。


「できれば、素敵な男性から聞きたい言葉だわ」


貴女が言ってどうするの、と呆れに近い言葉をかけられても、ライナはうっとりとミレーヌを見つめている。今まで見てきたミレーヌの格好は彼女にとって本当に〝普段着〟の扱いになるのだとその時初めて知った。

こんなにも薄いのに、何故光沢感が出ているのだろう。ミレーヌが一歩進むごとに煌めいて見える。少女らしさの残る淡い色合いと、腕や胸元の露出が絶妙で、ミレーヌくらいの子どもと大人の狭間にいる年齢の女性にはぴったりだ。