「 ……それなら、これはどうかしら? 私はあまり気が進まないけれど」


ミレーヌはあらかじめ用意してあったドレスたちではなく、壁際に備え付けられていた棚から一着を手に取って戻りライナの体に当てた。

青色が美しい、控え目なワンピースだった。


「普段着に近いから、少し地味なのよねえ……」


ため息を吐くミレーヌに、一体どこが地味なのだろうとライナは息を飲んだ。


「地味だなんて! ……着てみてもいいですか?」

「いいわよ。また少ししたら来るわね」


一旦ミレーヌが退室し、ライナは青いワンピースへと視線を移す。上品な印象を与える濃い青色のそれは柔らかな素材でできており、そっと触れるとふんわりと手を包むような肌触りだ。腰の部分には更に深い青色のリボンが留められている。首元は決して詰まってはいないが、鎖骨が見えるほど開いてもいなそうだ。

ライナは傷付けてしまわないよう、慎重にゆっくりと着替えを始めた。


「素敵……」


着替えが終わったライナは、姿見の前で立ち尽くしたまま動けずにいる。

手に取った時から心を奪われていたが、実際に着てみると更に思いが膨らんでいく。腰のリボンが切り返しの役目を果たしているようで、そこから裾に向けて控え目に広がったスカート部分がふわりと揺れて可愛らしい。そして着てみて初めて気付いたことだが、腕の部分は薄い布地で作られているようでほんのりと透けている。普段のライナならば絶対に着られないようなデザインだ。


「ーーやっぱり地味だわ。本当にそれでよろしくて?」


いつの間にか部屋に入って来ていたミレーヌがライナの隣に立っていた。ミレーヌはこういった集まりに一体どれほど着飾って行くのだろう。もしかしたらこの格好では恥ずかしいのかもしれないが、ライナは心から満足していた。