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「雑草がとんでもないことになっているわ……」


ふう、と息を吐いて汗を拭う。
ライナはひとり、畑で奮闘していた。上から下まで完全防備の作業用の服に身を包んで。あまり日差しの強い日ではなかったが、病み上がりのため帽子も被っておいた。


ーーライナが倒れてから既に10日ほど経っている。セーラが泊まり込みで看病したお陰で体調は大分回復してきていることに、ライナはとても感謝していた。こうしてまた畑に出られるようにまで良くなったのだから。

久々に畑の様子を見て、ライナは安堵していた。多少水をやらなかったとしてもすぐに枯れてしまう花が少なかったため、想像していたより被害がなかった。
その代わり、思っていたよりもたくさんの雑草たちが出迎えてくれたことに思わず苦笑してしまう。


「これは長い戦いになりそう……」


ライナは農具を片手に、盛大なため息を吐いた。


ぶちりぶちりと草をむしる音と、カキンカキンと古びた金属の擦れる音が響く。そして、ほんのたまに遥か上空から鳥の鳴き声。珍しく風は無いので木々が揺れる音だけはしなかった。

普段ライナは不必要に草を刈ることはしないのだが、花の周りには神経を尖らせている。一定の間隔が空いていないと、十分に栄養が届かず成長しなかったり、枯れてしまったりするからだ。

無心に手を動かしながら、明日にはセーラの所へお礼を言いに行こうと考えていた。詳しい状況は聞いていなかったが、どうやらライナは家の外で倒れていたらしい。もし偶然セーラが通りかかっていなかったらと思うと、ライナはぞっとした。身近な人を悲しませたくないと思っていたところだったが、また気苦労をかけてしまった。


(きっとお店にも迷惑をかけてしまったわ。……早く一人前になって、セーラさんたちを安心させないと)


そう自分に言い聞かせて、お礼と一緒に渡す花をどれにしようかと花畑をぐるりと見渡した。