「……セーラさん」

「ん?」


やがて呼吸が落ち着くと、ライナは小さな声で話し始めた。セーラはすぐ近くに椅子を引いてきて、ライナの方を向いて座っている。


「私、失敗しちゃいました。……全部、うまくいかなくて」

「そう」

「頑張り方を間違えたのかもしれません」


落ち込むライナを見て、セーラは笑う。どこまでもまっすぐなライナが愛しいと思った。


「そうやって気付くこともあるよ。次はもっとうまく出来るさ」

「次……」


〝次〟は存在しないと知っているライナは、この経験が何かに生かされることはないと気付いていた。あるのは、これ以上セーラを悲しませたくないという気持ちだけだ。

少しずつ眠気がやってきたライナは、いつもは押さえ込んでしまうその小さな不安を口に出すことにした。


「セーラさん、わがままを言ってもいいですか」

「なあに」

「私が眠るまで、手を繋いでいて欲しいです」

「珍しいね。どうしたの」


ライナの申し出にセーラは驚いた。いくら普段親子のように接していても、どこか他人行儀な部分が拭えなかったというのに、今のライナの要求は、遠慮を知らない幼い子どものようだ。

セーラがぎゅっと手を握ると、ライナは嬉しそうに微笑んだ。


「ふふふ。自分に甘えてみました」

「はは、調子がいいんだから」


かつてセーラのかけた言葉だ。ライナはまだ答えが見つからずにいたが、ゆっくり考えようと思っている。何せ人生、まだ先が長い。ライナには時間がたっぷりあるのだ。

しばらくして、小さな寝息が聞こえてくる。
セーラはライナのために、何か消化の良さそうな、あまり噛まなくても食べられる柔らかい食事を作ろうかとそっと立ち上がった。