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見慣れた天井を視界に認めて身じろぎすると、慣れ親しんだ声が飛んできた。


「ん……」

「ライナ! 目が覚めた?」


がっしりと掴まれた腕が痛い。ライナがかろうじて首を動かすと、心配そうに見つめるセーラと目が合った。


「セーラさん、どうして……」

「良かったよ、本当に……。ああ、喉が渇いたでしょう」


そう言うとパッと立ち上がり、ライナに飲ませるための飲み物を用意し始めた。その背中をぼんやりと眺めていたライナは、何がどうなったのか分からずにいた。ひりひりと喉が痛む。


「はいどうぞ。……起きられるかい?」


戻ってきたセーラはライナの背に手を当てて、体を起こすのを手伝う。ライナは、渡された愛用の木のコップに口を付けると、喉が潤っていくのを感じてゆっくりと息をついた。


「はあ、美味しい」

「それ飲んだらもうしばらく寝てなよ」


前髪を撫でられながら優しく言われると、何だかくすぐったい。こんなことをされるのは、子どもの頃以来だとライナは思った。


「随分と無理をしていたんだね」

「……」

「疲労からくる風邪みたいなものだって。気付けなかったのはあたしの責任だね」

「そんなこと……っ」


セーラの発言に驚いて否定しようとしたが、思いきり咳き込んでしまい、言葉を継げなかった。咳のせいで頭に酸素が回らず、必死に息を吸う。温かい手に背中をさすられて、ライナは泣きそうになった。