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鳥のさえずりがやけに耳に刺さる。頭の奥の方まで響いてくるようだ。


「う、ううん……」


ごろんと寝返りを打ったライナは、ゆっくり目を開けた。いつもと変わらないようで何かが違う、そんな朝だった。

ほんの少し、視界がぼやけている。


(何だろう、この感覚)


起き上がると今度は、目の前の世界がぐるぐると回る。見慣れたはずの古い家具がぐにゃぐにゃと曲がるような錯覚に陥り、ライナは驚き目を見開いた。


「え、なに、これ……っ」


不安が胸を覆い尽くし、動悸がする。果たして今が本当に朝なのかも分からない。

立ち上がってもうまく歩くことが出来ず、思わず近くの壁に手をついた。そのまま壁伝いによろよろと戸口までやってきたライナは、焦って戸を開ける。外の新鮮な空気を吸えば、気分が落ち着くかもしれないと考えたからだ。


ーーキイ。


いつもと変わらない青い空も、浮かぶ雲も、そよぐ風すらもライナには何ひとつ分からなかった。


(何て眩しいのーー)


それが、太陽の光なのかどうかも分からないほどに視界が真っ白に塗りつぶされたまま、ライナはその場に崩れ落ちた。