そう言われてライナは初めて、このことが騎士団の中で機密情報として扱われていると知った。

ライナの胸に一抹の不安が過ぎる。
秘密にするほどのことだ。一体どんな危険が潜んでいるのだろうと、ドキドキと心臓が早鐘を打つ。

そんなライナの心情を読みとったのか、短髪の騎士ははっきりと告げた。


「心配ない。この辺りに住まう人々は、我々がしっかりと警護する」

「ありがとうございます……とても心強いです」


ライナはほう、と息が漏らした。優秀と評判の騎士団がそう言ってくれたのだ、安心感がある。

隣の長髪の騎士は、ライナの顔をまじまじと見て笑った。


「それにしても、ライナ殿は噂よりずっと可愛らしい方ですね」

「え?」


もちろんライナはこの長髪の騎士とも初対面だ。そんな彼が知っている噂とは、どんなものなのだろう。


「あの、噂ってーー」

「おい、お前団長に殺されるぞ」


ライナの質問を遮って、短髪の騎士が長髪の彼を強めに小突いた。たった今口を出た物騒な言葉にライナの背筋が竦み上がる。


「……失礼しました。まだ死にたくないので、今のは聞かなかったことに」

「は、はい」


長髪の騎士もまた、笑顔でおかしなことを言う。


(私の噂も機密情報? その騎士団長様は余程恐ろしい方なのね……)


ライナはすっかり怯えてしまい、結局何も聞くことができないままだった。