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それからライナは、セーラの元へ足繁く通うようになっていた。自分ひとりではとても思い至らないような調理法や、それぞれの野菜に合った味付けを知る度に、満ち足りた気分になる。それが自己満足だということはもちろん分かってはいたが、食べてくれるかもしれない人のことを思いながら勉強するのは楽しい。
準備万端とまではいかないが、いくらかは成長できたのではないかと思える時分になっていた。


「これでよし、と」


その日も復習を兼ねて、教えてもらったばかりの調理法を試していた。今下ごしらえをしておけば、夕食には十分に間に合う。

少し休憩をしようかと、手近な椅子に腰を落ち着けようとしたときだ。


ーーコンコン。

(も、もしかしたら、イルミスさんが来てくれたのかもしれない!)


ライナは慌てて、控えめに叩かれた戸へ向かう。ーーここ最近は忙しいのか、イルミスの姿を見ることはなかったのだ。前に一度断ってしまっているが、本当はまた一緒に食卓を囲みたい。


ライナは勢いよく戸を開けて、そしてそのまま固まってしまった。


ーーそこには見慣れた騎士団の制服を身にまとった、見慣れない若い男性が2人立っていた。