『わああ、綺麗! キノコが光ってる』


今よりもずっと子どもで、弱かった頃。
ーーけれども、今よりももっと素直で、正直だったと思う。

この場所までたどり着いた後、祖母は私に夜キノコを見せながら言った。


『綺麗でしょう。でもこのキノコはね、地面から離れると途端に光を失ってしまうんだ。だからこうして眺めるだけ。……普段花を扱っていると鈍くなってしまうけれど、本来植物は皆そうなんだよ』


祖母はきっと、時々自分を律するために夜キノコを見に来ていたのだろう。ライナもまた同じようにここへ訪れるようになり、そう思うようになった。


『だから私たちも、大事に花のお世話をしないとね』

(ーー気付きにくいけれど、土から離れた瞬間から花の輝きは失われていくんだ)


夜キノコを見つめながら、ライナはしばらくの間物思いに耽っていた。

途中〝こんなところをイルミスに見られたら、きっと叱られてしまうに違いない〟ということを考え始めてしまい、余計な感情を追い出すのに苦労しながら。