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「少しだけ、寄り道しようかな」


ライナは先日イルミスとキノコを採った場所までやってきた。こんな暗い中訪れる場所ではないが、それはいつも夜にしか起こらない。


「あった! 夜キノコ」


ライナはそっと小振りの傘に手のひらを添えた。そこには柔らかく光を放つ、小さなキノコが群生している。

夜キノコ、とは祖母が付けた名前だ。安直過ぎる命名だが、ライナは割と気に入っている。


「ふふふ。今夜も綺麗」


まるで人を誘うように光るこのキノコは、今夜のような月のない晩に、よく映える。白いような黄色いような、鈍く淡い色。昼間は木と同化する色合いで全く目立たないのに、闇夜の世界では主役になれる。このキノコがどういう原理で光っているのかライナは知らなかったが、こうして見ているととても癒された。


ライナは長い間このキノコの存在を知らなかったのだが、ある晩祖母がこの場所へ連れてきてくれた。

あの時のことは、今でもよく覚えている。今夜のような、月のない晩だった。


『おばあちゃん、どこへ行くの?』


暗い夜道に、不安になって何度も尋ねた。祖母は〝秘密だよ〟と、たどり着くまで何も教えてはくれなかった。そのため、思わず自ら繋いだ手を強く握り、ただついて行くしかなかった。