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味見した鍋料理から顔を離して、セーラは満足そうに頷いた。


「……今日はまあ、こんなところだね」

「セーラさんさすがです。野菜ってこんなに甘くなるんですね」


言いながら、ライナは畑で育てている瓜のことを考えていた。どんなに煮ても苦味が取れないことを、何年も気にしていたのだ。セーラに教えてもらった下処理の方法ならば、ライナにも簡単にできそうだ。


「早速うちの野菜でも試してみます。ふふ、楽しみです」


その日ライナはセーラの家で夕食をご馳走になった。買い付けから戻ってきたセーラの夫のダグラスも加わり、賑やかな食卓だ。


「この煮物は、ライナが作ったんだよ」

「へえ、ライナが。どれどれ」


ダグラスが美味い美味いと恥ずかしくなるほど褒めちぎるので、ライナは気を紛らわすようにスープを飲んだ。


「ダグラスさん、褒めすぎです……」

「本当。娘には甘いんだからさ、全く!」


あたしにはこれっぽっちも優しくないのにさ! とケラケラ笑うセーラを見て、ライナの胸は温かくなった。自分にも家族がいたら、こんな風に笑って楽しく食事ができるのかもしれない。

もし、イルミスにもっとたくさんの料理を振る舞えたなら。

花のこと以外に関心を持ってもらえれば、また彼がライナに会いに来てくれる可能性もある。そして少しずつ、自分の知らない彼のことも教えてもらえるのではないかと、ライナはほんの少し期待していた。

先ほど疑問を口にしたセーラへ思わず取り繕ってしまったのは、そんな下心があるからだ。
このにじみ出てしまっている気持ちを彼女に知られているであろうことも、ライナには自覚があった。


(まるで親のように優しい2人を悲しませることは、絶対にしてはいけない)


もっと慎重に生きよう、そうライナは決意を新たにした。