その表情にライナは思わず、ごくりと唾を飲み込む。もう日も暮れてしまったし花は見せられない。一体何を言われるのだろうと身構えた。


「ライナの無事を確認できたので、今日の用事は終了です」

「……あの? どういうことでしょう?」


言われた言葉の意味が今ひとつ理解できず、ライナは聞き返した。


「ライナに会いに来ることが、大事な用件そのものなので」

「え……」


固まってしまったライナに気付いたイルミスが、こほんと咳払いをして補足の説明をする。


「ああ、いえ。……最近この辺りでよからぬ噂を聞くのです。見回りのルートを増やそうかと議論しているところなのですよ」

「そ、そうなのですか。さすが騎士団の方々は、いつも国のことを考えているのですね」


ライナの住んでいる場所は、騎士団の見回り範囲外だ。イルミスはあくまでも〝騎士団として〟見回りの下見をしているだけに過ぎない。たまたま顔見知りのライナを不憫に思い手伝ってくれただけだというのに、先ほどから思い上がってしまってばかりいる。


(わ、私ったら自分に都合のいいことばかり……)


立ち上がりイルミスを見送ろうと着いていくと、戸口で止められた。暗いため外に出ないように言い置かれる。


「また来ます。戸締まりはしっかりしなさいね」


そう言い残して、イルミスは帰って行く。


室内を振り返ると、済んでしまった食事の後が目に入る。
どうしようもなく寂しい気持ちに気付いてしまい、何故だかライナは泣きたくなった。