「駄目です! 私、料理は得意ではないので……もうお出しできるものがありません」


このまま流されてしまうと、イルミスは本当にやりかねない。ライナは涙目になって懇願した。そんな様子を見て、イルミスは堪らず吹き出した。


「私は別に、毎回キノコのスープで構いませんが」


その言葉を聞いて、またライナの顔がカッと赤くなった。年齢だけは立派な成人だというのに、かろうじて人に出せる料理がキノコのスープくらいしかない自分がひどく恥ずかしく思えたからだ。


「イルミスさんがよくても、私が駄目なのです!」

「……ライナの心は、花を育てることより難しいですね」


イルミスはそっとため息を吐いて、わかりました、と諦めたように笑った。


「次は、普通に会いに来ます」

「う……それもどうかと思うのですが……」


何故? とでも言いたそうに視線を向けてくるイルミスに、ライナは遠慮がちに尋ねた。それは、先ほど聞きそびれてしまったことだ。


「……お休みの日なのにここへいらっしゃるだなんて、余程重要なことかと気になったのです。本当は、何か別のご用件があるのではないですか?」


ライナの問いかけに、しばし黙り込んだイルミスは、真面目な顔をして頷いた。


「……そうですね。とても大事な用事です」