「それで、跡を継ごうと?」

「はい。祖母のようにはうまくいきませんが、生きる喜びを花に教えてもらったような気がして」

「私には、天職に見えますよ」


そうイルミスに声をかけられると、ライナは照れたようにはにかんだ。


「……ありがとうございます。でも、人生は思うようにいかないものですね」


嬉しそうにする反面、一瞬悲しそうな色が浮かんだライナが気になったが、イルミスが言い出す前にそれを自ら打ち消した。


「すみません、つい長話をしてしまいました」

「……構いません。ライナの人となりが、ますます好きになりましたから」

「え?!」


ライナに聞こえるくらいの絶妙な声量で発したその台詞は、ライナに驚きの声を上げさせる。


(お、落ち着いて。イルミスさんは〝人となり〟と言っただけだわ。私自身ではなく……)


愛の告白かと早とちりしそうになってしまったライナは深呼吸を繰り返す。


「どうしました? 顔が真っ赤ですよ」

「あ、す、少し暑いかなあって思ってしまって」


そんなひとりで忙しく百面相をしているライナを見て、イルミスはくすりと笑う。


ーー彼女には、ずっと変わらずにいて欲しいと願いながら。