先ほど森で採ってきたキノコと畑で収穫した野菜を使い、急いでスープを作る。後は簡単なサラダと、昨日のうちに買ってきていたパン。


(こんなことになるなら、もっとちゃんとしたものを用意しておけばよかった)


ちらりと振り返れば、イルミスがテーブルに着いている。いつもはひとりで過ごしているこの部屋に、人がいるのは新鮮だ。

ライナは人知れずため息を吐く。味見をしたところいつもと何ら変わらないスープの味だが、果たしてイルミスの口には合うのだろうか。ライナはどんよりとした気持ちのまま皿に料理をよそった。イルミスに配膳をして自分も席に着くと、ありがとう、と声をかけられた。

湯気の向こうでイルミスが笑っている。

ライナは夢でも見ているような現実離れした気分になった。両親が健在だった頃はこうして毎日食卓を囲んでいたし、祖母と2人で暮らしていたときも楽しく過ごしていた。

ーーひとりの時間が長すぎて、すっかり忘れてしまっていた。


「美味しそうですね。いただきましょう」


その声でハッと我に返った。
イルミスがライナの作ったキノコのスープを口に運んでいる。不安な表情でじっとその様子を見ていると、視線が絡まった。


「ーーそんなに心配そうな顔をしないで。とても美味しいスープですよ」

「本当、ですか……?」

「はい。野菜も甘くて一生懸命作ってくれたライナの優しさが伝わってきます」

「……ありがとうございます」


もしかしたらお世辞かもしれないが、それでも嬉しくなったライナはそっとスープを口にした。キノコの味がよく出たスープが、ライナのお腹と心を満たしていった。