「でも、そのスープには大変興味があります。……誘われてもいいだろうか?」

「えっ、で、でも、お忙しいのでは」


ライナは返答に困り、イルミスの忙しさのせいにした。本当はそんな日がいつか来ればいいなと薄く夢を見ていたというのに。


「心配ご無用。今日は非番です」

「……!」

「では行きましょうか」


そうさらりと告げたイルミスは、ライナの家へと続く小道へ歩き出した。


「イルミスさん! 私、そういうつもりで言ったのでは断じてありませんから! それだけは」


後ろをついて来ながら、ライナは必死に弁解をする。語気が強まっているところも、イルミスには微笑ましく思えた。


「分かっています。貴女の言葉に裏はない。ただ、世の中にはそう受け取らない者も大勢いることを忘れずに。……本当に、私で良かったですね」


にっこり、という言葉通りの完璧な笑顔を見せられて、ライナは早速言葉を発することができなくなった。


「……勉強になりました」


隣を歩くことは諦めて、ライナは少し後ろを俯きながら歩いた。


(私の顔の熱は、いつ元に戻るのかしらーー)