「ええ?! 決して、そんな、つもりは……」


さっと血の気が引いて、ライナは立ちすくんだ。イルミスは表情を消したまま、ライナをじっと見ている。

ーー彼は城に勤める騎士団員だ。
もしかしたらミレーヌのような着飾った美しい人たちが、あの手この手でイルミスの気を引こうとしていたのかもしれない。いや、きっと現在進行形でそれは起こっているに違いない。


(私ってば、何てことを言ってしまったの)


ライナは、自分の世界が小さすぎることを悔やんだ。


「……ライナ。貴女は不用心に過ぎる」


しばし沈黙した後、イルミスは盛大なため息を吐いた。


「今後、異性にそのような話はしないように」

「……すみません」


キノコを抱えたまましょんぼりとうなだれたライナを見て、イルミスは苦笑を漏らした。少女がそのまま大人になったような彼女に対して、ちょっとした悪戯心がわき出てくるのを止められなかった。

袋に詰めるため、ライナの手からキノコを受け取ろうと近付いた時に、そっと声をかけた。