生まれて初めての大役に、ライナは冷や汗が吹き出した。粗相があったら殺されるかもしれないと、血の気が引いていく。
そんなライナの様子を見て、何か感じ取ったらしく、目の前の騎士団員は笑顔を見せた。


「そんなに緊張なさらないでください。王は気まぐれな人で、時々このような突飛なことを言われるのです」

「そうなのですか……」


ライナは震える手で奥から白い花を取り出した。ユリによく似たその花は、優しい香りを放っている。


「こ、こちらはいかがでしょうか。弱い香りがあるので、寝室に良いかと」


実際ライナもお気に入りだった。不安で眠れない夜はこの香りのお陰でぐっすり眠りにつける。
ライナが手に取った白い花を数秒見つめた後、騎士団員はゆっくりと頷いた。


「気に入りました。お願いします」


白い花をあるだけ買い、彼は城の方へ戻って行った。

思わず自分の好きな花を勧めてしまったが、これで良かったのだろうか。
お陰様でパンもミルクも買えたが、ライナはその日眠りにつくまで悩んでしまったのだった。……結局、花の香りのお陰ですっかり眠ってしまったのだが。