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「これはまた……ふふ」

「すぐに終わります! 少し待っていてください」


小道を少し外れた茂みの奥。
腕まくりをしたライナが進んで行った先には、かわいらしい傘が並んでいる。イルミスは、邪魔にならない程度に近付いてその様子を珍しげに眺めることにした。


「ーーライナは、花だけでなく、キノコ採りの名人でもあったわけですね」

「名人だなんてそんな……キノコの名前も知らないんです」


ライナのもうひとつの用事とは、キノコの採取をすることだった。時々この場所を訪ねては、自生しているキノコを少しだけ採って帰る。ころんと愛嬌のある丸い傘が、何ともかわいらしい。これも祖母から教えてもらった、生きるための知恵のひとつ。改めて偉大な人だとライナは思う。


「でもこれは、スープに入れるととても美味しいんですよ」


普段自分で食べる分の料理しか作らないため、ライナは料理があまり得意ではなかった。それでも祖母から教わった料理のうち唯一自慢できるのが、野菜を沢山入れた、名も知れぬキノコのスープだったのだ。

だからつい、はしゃいでイルミスに話してしまっていた。


「ーーそれは、〝夕飯を一緒にいかが?〟という誘い文句ですか?」