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「こんな所まで送っていただき、ありがとうございました」


戸口でお礼を言うライナを見て、イルミスは微笑んだ。


「顔を上げてください。礼を言われるようなことは私は何も」

「いいえ、騎士様は色々とよくしてくださいました。お城からも遠いでしょうに……」


そうライナが言うと、イルミスが表情を変えてため息を吐いた。今までの優しい表情が消えたので、ライナは狼狽える。


(私、何か失礼なことを言ってしまったかしら……)


自分の発言が相手を傷付けてしまったかもしれないと反省していると、不意に近付いた気配にライナは顔を上げた。


「ライナ」

「は、はい」


随分と近い距離に慌てて一歩下がったライナは、背中が家の扉に当たったことでそれ以上下がれないことを知った。