振り向けないライナが泣いていると知るやいなや、ガサガサと草葉を踏む音を立てながらイルミスが近付く。ひどく焦ったように再び声をかけた。


「どうしたのですか。……何故、泣いている」


イルミスには心配をかけたくない。この場に彼がいることを疑問に思う余裕すらないライナは、そばに寄った気配を敏感に感じ取っていた。何とか〝大丈夫〟だと答えたいのに、しゃくりあげてしまいうまく喋ることができない。

涙を止めようと何度も目をこするライナの手が、ひと回り大きな手によって阻まれた。掴まれた部分が、熱を持つ。


「……ライナ」


ぽつりと低く呟かれた自分の名前に驚いたライナが顔を上げようとすると、視界が塞がれる。

ーーイルミスがライナを優しく包んだのだ。


「落ち着くまで、待っています」


ライナは驚きの連続で声を出せずにいたが、額や背中に感じるその温もりはとても心地良いもので、そのまま目を閉じて体を預けた。