元々は、ライナの祖母がこの市場で花売りをしていた。幼い頃に両親が他界してしまったライナは、祖母に育てられたのだ。

ここからは少し遠いが、豊かな湖を持った静かな森のそばに自宅がある。
裏には小さくも立派な花畑があり、祖母は毎朝早くから支度をし、市場に出ていた。
日が昇ってすっかり午後になると帰宅する。
そしてゆっくり休憩する暇もなく、花々の手入れをするのだ。勿論、家事にも手を抜かず
に。

ライナは、そんな風にくるくると働く祖母が誇りだった。

また、祖母は顔が広く、人徳のある人だった。祖母と話したくてやってくる客もたくさんいたほどに。

毎朝飛ぶように売れる花を見ては笑顔になり、祖母と話したくてやってくる客を見る度に嬉しくなったものだ。


いつか私も、祖母のようにーー。


小さな胸ながら、幼いライナはそう思っていた。


ふう、とため息を吐く。また昔のことを思い出してしまった。人生そんなに、上手くいくものではない。