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「ライナ、機嫌を直してください」

「もう! 笑い事ではありません」


事の真相を知ったライナは、珍しくむくれていた。あんなに怖がっていたというのに、まさか夜キノコを見に行っていた自分が今までずっと魔女と間違えられていたとは。

ライナは椅子に腰を下ろしたままそっぽを向いて、乱暴にお菓子を口に放り込んでいる。途中まで用意していたお茶は、すっかり冷めてしまっていた。


「そんなに怒らないで。せっかくの美人が台無しですよ」

「怒ってなんか……!」


どんなに怒っていても、褒められ慣れていないライナはすぐに反応してしまうのだ。お世辞とは分かっていても、美人と言われたことでみるみるうちに赤くなっていくライナの横顔を、イルミスは楽しそうに眺めている。

しばらくの間そうしていたが、イルミスは不意に真顔に戻り、静かに問いただし始めた。


「ところで。……昨夜遅くに、外に出かけたのですね? あれほど戸締まりをしなさいと言ったのに」

「え、あの、それはーー」


しまった、と思ったが時既に遅し。
形勢が完全に逆転してしまい観念したライナは、まだ話せずにいた夜キノコの話をイルミスに話すことにした。ーー本当は、もっと恋人らしい雰囲気のある時に伝えたかったのだが。