随分と庶民的な魔女だ。
ライナがそう思いを巡らせていると、頭上ではイルミスが堪えきれずに吹き出した。


「そうです。き、キノコ……です。ふ、ふふっ」


笑いが止まらなくなってしまうと噂の毒キノコでも食べてしまったのかと思うほど、イルミスは肩を震わせている。

その姿を見て、ライナはひとつの答えに思い至った。
昨夜は月の無い晩だったため、ライナは時々そうするように夜キノコを眺めに出かけていたからだ。そして確かに、後ろの草の間からガサガサと何かが動く音を聞いていた。


「……」

「失礼。彼女が見回りの者に気付いて振り返りそうになったので、命からがら逃げてきたとのことです」


何とか持ち直して報告し終えたが、イルミスの目は笑ったままライナを見下ろしている。


「魔力で殺されると思ったのかも」

「そんなことできません! 私はただ、野うさぎかと思って……!」

「おや?」


聞かれた訳でもないのに反射的に答えてしまい、ハッとしたライナが慌てて手のひらで口元を覆うと、イルミスは笑顔で言い放った。


「ーーこれはまた、随分と可愛らしい魔女ですね」