そのライナの問いかけを全く聞いていないのか、イルミスは勢いよくライナの両肩に手をかけた。


「ーーライナ。ようやく正体が分かりました」

「正体?」


一体何の話をしているのか分からず、ぽかんと聞き返すライナに、いつもより早口でイルミスは告げた。


「魔女ですよ。森の中に現れると噂の。今朝報告が上がりまして、昨夜見回りの者が見たそうです」

「え、ええ?! 本当ですか?!」


ずっと怖いと思っていた魔女騒動がこれでようやく収束の兆しを見せると思うと、ライナはほっと胸をなで下ろした。ここまで来てくれたイルミスに椅子を勧めることも忘れて、ライナは戸口で立ったまま真剣に聞いている。


「昨夜は月が出ていなくてとても暗かった。彼が森の中を見回っていたところ、女性のような人影に気付いたそうです。そっと後を付けると、彼女はゆっくりと茂みの中へ入って行きました」

「は、はい……それで」


ーー想像するだけで恐ろしい。
ごくりと唾を飲み込んだライナが、話の続きを促した。


「茂みの奥には美しく光り輝くキノコが生えており、彼女はそれをしばらくの間笑顔で眺めていたそうです」

「キノコ……?」