木漏れ日が降り注ぎ、顔にまだらな影を落とす。弱く吹く風が肌に心地良い。

先ほどから特に会話らしい会話もなく、2人は黙々とライナの家へ向かって歩いている。踏みしめる葉の音や、お互いの荷物の音が響いて、会話が無くとも随分賑やかだ。


「この森はいつも、優しいですね」


突然感慨深くイルミスが言い、ライナは見上げた。遠くを見ながら思いを馳せているような姿が目に入る。


「ライナの雰囲気そのままです。貴女を大事にしないと、森が怒ってしまいそうだ」

「そんなことはありませんよ。ふふ、急にどうしたのですか?」


ここに住むようになってから長い時が経っているため、ライナにはイルミスの言うことがよく分からなかった。


「私は、結婚したらライナの家で暮らそうと思っています」

「……え?!」


ライナは足を止めて、再びイルミスを見上げた。イルミスもライナに合わせて、立ち止まる。


「私の仕事の事情もありますから、毎日は一緒にいられないかもしれない。けれど、可能な限りここへ戻ってきて、共に過ごしたい」

「で、でも、そんなこと……」