「けっ、こん?!」


カッと目を見開いたライナは、まばたきをすることすら忘れてイルミスを見上げた。イルミスは表情を崩さずに続ける。


「何故驚くのですか。好き合った者同士なのだから、ごく自然な流れだと思いますが」

「好き合った……」


これが本当に自然な流れなのか分からず、ライナはただ困惑した。イルミスはふうとため息を吐き、ライナの頬から手を降ろす。そして、どことなく悲しそうな声を出した。


「……それとも、全て嘘なのですか。ライナのその、思わせぶりな態度は」

「違います! 私はイルミスさんが好きです!」

「そうですか」


嘘だと思われたくない一心で力いっぱい否定すると、一転して満足そうに微笑まれた。ライナはそこで、イルミスに言わされたのだと策略に気付く。恥ずかしく思いながらも、イルミスの真意がつかめない。ライナには、思い当たる節があった。


「もしかして、責任を感じてそのようなことを言っているのではないですか……?」

「責任?」

「その、私が倒れたときの……」


言った途端にセーラの話を再度思い出してしまったライナは、段々声が小さくなっていった。


「ええ、それはもう」


イルミスが真面目な顔をして深く頷いた姿を見て、ライナの視線と気分はどんどん下がっていく。

ーー大好きな人だからこそ、誤った選択はして欲しくない。


「やっぱり! それについてはイルミスさんが責任を負う必要なんてありませんから! だから」


だから考え直して欲しい、そうライナが言おうと顔を上げた瞬間、あまりにも近すぎる位置にイルミスの顔があった。
あっという間すら与えられず、ライナの視界は遮られた。


ーー唇が触れる直前に、碧い瞳が優しく細められたことだけはよく覚えている。