深く、長い息を吐いたイルミスに、ライナはそっとお茶のお代わりを注いだ。


「ありがとう。今こうして、共に過ごせるだけで満たされます」

「……私も、です」


囁くように呟いた返事はしっかりイルミスに届いたようで、優しい笑みを向けられた。つい力が入ってしまい、ライナの手の中にあった首飾りがシャラリと音を立てる。ライナは、リンディアの花が据えられた部分を指でなぞりながら、胸の内を明かした。


「ーー私は、イルミスさんに思ってもらえるような価値などありません」

「何を……」

「イルミスさんは、いつも私にとても良くしてくださいます。今日はこんなに素敵な首飾りまで」


しかも、その首飾りはただ用意したものではない。ライナの育てたリンディアの花を入れ込むという細工をしているのだ。イルミスがライナのことを思って行動していた間、ライナがしていたことと言えば。


「それなのに私は、自分の殻に閉じこもってばかりいました。イルミスさんがリンディアを買っていかれたので、〝イルミスさんには思っている方がいる〟とか、〝もうイルミスさんに会えないかもしれない〟とか、自分中心な考えばかりしていたことが恥ずかしくて……」

「リンディアのことは、私が悪い」


イルミスは軽く首を振った。


「ライナの目の前であのような行動をすれば、勘違いされるのも当然です。……と、今なら冷静に言えるのですが」


苦笑を漏らしたイルミスは、顎を上げて天井を仰ぎ見た。


「あの時ライナがリンディアを育てていると知り、いてもたってもいられなくなってしまいました。衝動的に動いてしまった」


いつも落ち着いていて余裕すら感じられるイルミスとは思えない発言に、ライナはただ驚いた。同時に、彼をより近くに感じることができて嬉しくも思う。